耳で楽しむアート「聴く美の巨人」を展開。テレビ東京が仕掛ける「アート×ビジネス」

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テレビ東京は、2016年から幅広いジャンルのアート作品が展示・販売される日本最大級のアートの見本市「アートフェア東京」を主催。さらに、「アート×ビジネス」の可能性を模索し、様々な形で展開してきた。

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そんな中、前身の番組を含め20年以上続く長寿番組「新美の巨人たち」が、2021年4月より、音声コンテンツサービス「聴く美の巨人」(有料)を開始。「アートスポット・ウォークガイド」「必聴!番組蔵出しインタビュー」「アート×ビジネス」と3つのジャンルを用意し、番組ファンやアートを愛する方はもちろん、アートに苦手意識がある方にも楽しんでもらえるコンテンツを提供している。

「テレ東コンシェルジュ」は、番組プロデューサーの林祐輔さん(テレビ東京)、「聴く美の巨人」を事業推進したビジネス開発局イベント事業部・陳賛淑さん(テレビ東京)を取材。ビジネスが立ち上がるまでの経緯と今後の展開について話を聞いた。

202204271200_03.png ▲左から、陳さん、林プロデューサー

ユーザーのニーズが見えない段階だからこそ、欲張りなコンテンツを



――「美の巨人たち」は、2019年4月に「新美の巨人たち」としてリニューアル。毎回"アートトラベラー"としてタレントや著名人がナビゲートする番組に生まれ変わりました。今後、番組が目指している方向性についてお聞かせください。

林「リニューアルした理由のひとつに、アートが好きな方はもちろん、それほどアートに詳しくない方でも楽しめる内容にしたいという思いがありました。リニューアル後のラインナップを見ていただくとわかりますが、例えば江ノ電のある風景や葛西臨海水族園など、"暮らしの身近にあるアート"にもフォーカスしています。世の中の流れとして、すでに美術館で作品を鑑賞するだけがアートではなくなってきているので、今後も番組では、幅広いアートの楽しみ方を伝えていきたいと思っています」

――音声コンテンツ「聴く美の巨人」がリリースされるまでの経緯は?

林「制作スタッフと番組の多展開について話し合っていた時、"音声コンテンツであれば、アートを紹介する際、権利関係のハードルが下がるのでは?"ということに気づきました。有名なアートは知っている人も多いので、実際に映像を見なくても想像してもらえばいい。例え知らないアートだとしても、今はすぐネットで調べられます。そこでアートビジネスについて詳しい陳さんにプロジェクトに入ってもらい、音声コンテンツとしてどう広がりを持たせていくかを検討していきました」

陳「『聴く美の巨人』を配信している音声アプリ『33Tab(ミミタブ)』は、美術展の音声ガイドが多いプラットフォームですが、以前からテレビ東京としても、"耳でアートを楽しむ新しいコンテンツを提供したい"という思いがあり、今回の経緯に至りました」

――コンテンツを立ち上げるにあたり、苦労した点は?

林「スタートしてまもなく1年になりますが、ユーザーのニーズがどこにあるのか...正直まだつかみきれていません。どのデバイスで聴くのか、聴くときはどんなシチュエーションなのか、スマホで聴きながら実際にそのコースを歩いてくれるのか...。苦労というよりは、まだまだ課題が多いという印象です」

陳「だからこそ、コンテンツは欲張ってあらゆる層に楽しんでいただけるものに仕上げました。『アートスポット・ウォークガイド』は、"皇居一周 名建築と歴史の空想ウォーク"など、実際に現地を回りながら、または、自宅でゆったりした気分で"音"を通じて文化やアートに触れる、時間の使い方を含めた新たな提案をしています。屋外でも楽しめるので、コロナ禍においても、ソーシャルディスタンスもバッチリなコンテンツです。
『必聴!番組蔵出しインタビュー』は、鉄道ファンの方々がアートに興味を持っていただけるきっかけになれば...との狙いから、小田急ロマンスカー・GSE(70000形)の設計者である建築家・岡部憲明さんにフォーカスを当てました。番組内で紹介しきれなかった貴重なインタビューを世に届けたいという思いもあります。
『アート×ビジネス』は、テレビ東京がアートビジネスを手掛けるなら、『経済』『ビジネス』の要素は必ず取り込んでいきたい強い想いがありました。『カンブリア宮殿』などにご出演された著名な経営者の皆様に、アートに関するインタビューを行っています。経済、ビジネスの視点はテレビ東京ならではの強みだと思っています」

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林「『アートスポット・ウォークガイド』は、江戸東京たてもの園ともコラボしていますが、ご提案した際、博物館の皆様にはとても喜んでいただきました。やはり、『新美の巨人たち』がウォークガイドをやるということに価値を見出していただけたのかなと感じました」

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――「アート×ビジネス」に出演した、水野学さん(good design company 代表取締役)さん、山口絵理子さん(株式会社マザーハウス 代表兼チーフデザイナー)、藤野英人さん(レオス・キャピタルワークス株式会社 社長)の反応はいかがでしたか?

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陳「経営者の皆様にお気に入りのアートや影響を受けたアーティストなどを伺いましたが、皆さん改めて振り返る機会があまりなかったようで、新鮮だとおっしゃっていました。とても熱心にアートとの対峙の仕方を話していただいたので、私自身勉強になりましたし、第一線で活躍されている経営者ほどアートに造詣が深いと改めて感じました。こうしたコンテンツがそれほどないことに気づき、今後さらにパワーが生まれそうな予感がしています」

林「経営は論理や経験値だけでなく、クリエイティブが融合して新しい判断が生まれると言われますよね。今回インタビューした水野さんや藤野さんは、アートを語ることでそうしたことも伝えたかったのでは、と感じました。番組の音声コンテンツでここまでカバーできたことが嬉しかったし、とても意味があることだと思いました」

――ユーザーの反響はいかがでしょう。

陳「『皇居一周 名建築と歴史の空想ウォーク』を、金融系ウェビナーの「参加者アンケート」の特典としてプレゼントしたところ、QRコードを読み込むだけですぐ入手できるので、『特典として使い勝手が良い』という声を多数いただきました。これまで、番組グッズや記念品などを郵送していたことを考えると、新たなグッズ展開と言えます。
そして『アート×ビジネス』は、ぜひ大学生や就活生、新社会人の皆さんに聴いていただきたい。入学式や就活フェア、入社式などの特典として検討していただけたらいいなと。経営者がどういう目線でアートを見るか、ご自身の生き方にも直結する深いお話をしてくださっているので、ぜひ若い世代の皆さんにも触れていただきたいです」

テレビ東京のコンテンツが文化芸術の活性化につながるように



――「聴く美の巨人」の次なる展開は?

陳「"アート"と"旅"の事業を進めてみたいと考えていたこともあり、音声コンテンツに旅の要素をプラスし、新たな"アートツーリズム"のコンテンツに発展させられたらいいなと考えていました。そこで、『テレ東トラベル 旅する美の巨人たち』として、旅ツアーを提供することになりました。移動中に、バス車中で『聴く美の巨人』を聴きながら、これまで番組で取り上げてきた美術館などを、貸切見学&特別解説を付けて楽しめる内容で、第一弾は、『新美の巨人たち』の世界へ"アートな箱根"日帰りツアーです。現在、絶賛申込み受付中です!詳細はこちらから!

他にも、『アート×ビジネス』の場合は、アートに造詣が深い経営者や専門家をゲストでお迎えした双方向のオンラインセミナーなど、様々なサービスが考えられます」

林「制作側としては、例えば一つのアートを巡る小説や、聴いている人それぞれの中で物語が生まれるような...ラジオドラマに近いコンテンツも考えていけたらいいなと思っています」

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――陳さんは「アートフェア東京」も担当されていますが、アート×ビジネスの今後の可能性についてはどのようにお考えですか。

陳「イベント事業部として美術展を主催したり、『アートフェア東京』を盛り上げていく中で、人々が文化芸術に触れる心の余裕、そして、理解する教養は、国の力や将来に大きな影響を及ぼすのではないかと感じています。海外のアートフェアや美術館の運営は、大きな企業がサポートに入り、経済面からも文化芸術を支えています。文化政策に大きな予算を割いている国がたくさんある一方で、日本はまだ道半ば。
テレビ東京がアートのイベントや『聴く美の巨人』のようなコンテンツを生みだし、発展させていくことで文化芸術のボトムアップを図る..."アートに触れることで人生がより豊かになる"というメッセージを含めてやっていくことが、メディアとしての使命なのかもしれません。そのためには、今後一緒にコラボレーションしてくださるパートナー企業を見つけることも課題です。諦めずにやっていきたいです」

――テレビ番組が形を変えて多展開していくことについては、どのようにお考えでしょう。

林「地上波、BS、配信、オンラインイベント、音声コンテンツと、ソフトの配り方が増えたことで、地上波の限られた時間や制約の中では難しかった企画も、別の形でなら実現できるようになりました。今年1月、『新美の巨人たち』がキリンビールとTwitterでコラボしたんです。キリングループのシンボルマークである"聖獣麒麟"の知られざるストーリー(デザイン編、歴史編)を映像化、キリンビールの公式Twitterではデザイン編を、『新美の巨人たち』番組公式Twitterでは歴史編を公開しました。とても多くの反響をいただき、またひとつ新しい展開の形が作れました」

――今後展開したいビジネスプランはありますか?

林「アート×音楽という切り口で、アートファンと音楽ファンがシェアできるコンテンツが作れると面白いですよね。これから具体的に、いろいろ考えていきたいと思っています」

陳「先ほどお話しした『旅×アート』事業は、掘り下げていきたいですね。アートに造詣が深い方たちをターゲットにした"ちょっと欲張りなアートツーリズム"も企画したいです」

林「バーチャル上に美術館をつくって、いろんなジャンルの方の絵を展示できるようになったら面白いですよね。現実の美術館などに展示するのはコストがかかって大変ですが、バーチャル空間であれば、アーティストの皆さんがもっと気軽にチャンスを得ることができます。実際やるとなったらクリアしないといけない課題は多いと思いますが、リアルなアートツーリズムと掛け合わせることができたら、ビジネス的にももっと広がるような気がします」

【テレビ東京の強みとは?】

「民放でプライムタイムにアート番組を放送しているのはテレビ東京だけ。チャレンジが認められる社風であることはもちろん、"他にない価値を大事にする"というスピリット、これがテレ東DNAの強みだと感じます」(林さん)

「低予算の中、自分でできることは何でも自分でやる精神が染みついています。入社当初は、制作局で10年間番組制作をしていたこともあり、『聴く美の巨人』の『アート×ビジネス』のコンテンツについてもキャスティングから取材まで、結構自分でやってしまいました(笑)。特に様々な部署を経験している人は、その部署で培ったものをうまく掛け算していて、スピードやパワーにつなげているなと感じます」(陳さん)

【林祐輔 プロフィール】
テレビ東京制作局所属。1993年讀賣テレビ放送入社、主に報道・情報系番組を担当。2005年テレビ東京入社、制作局にてディレクター、プロデューサーとして番組制作に携わる。これまでの主な担当番組は「ペット大集合!ポチたま」「出没!アド街ック天国」「主治医が見つかる診療所」など。

【陳賛淑 プロフィール】
テレビ東京ビジネス開発局イベント事業部所属。(※取材当時。現在は、総合マーケティング局総合プロモーション部所属)2003年テレビ東京入社。入社後、制作局にて、丸10年間、番組制作に携わる。2013年、事業局イベント事業部(※当時)に異動し、様々なイベントを担当。「東急ジルベスターコンサート」「ミュージカル"オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~"」「舞台"三匹のおっさん"」「ボストン美術館浮世絵名品展 北斎」「アートフェア東京」高校eスポーツの祭典「STAGE:0」などを担当。

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